2005/05/31
<旧制高等学校> ナンバースクールとネームスクール


大正時代の書生を演じていると、衣装だけでなく、高等学校のことも勉強してみたくなる。
高等学校といえば寮歌である。バイオリン弾き語りで演奏できるのは現在、”ああ玉杯に花うけて”、”紅もゆる岡の花”、”あああ黎明は(近づけり)”等のみである。もっと覚えなくてはーーー
ほとんどの寮歌のリズムはターンタ、ターンタである。なぜだろう?弓はアップがいいのかダウンがいいのか、よく分かりません。
”青年の元気は一国の元気なり。青年の意気の振、不振は直接その国運の消長に関係す。 --中略ーー
わが寮生たるもの、その任務の重且つ大なるを思うとき、誰か意気更に揚りて天に冲するを覚えざるものあらんや。 それ寮歌は実にこの意気の発露なり顕現なり。只徒に怒号乱舞の具にあらざるなり。”
今から約80年前、大正15年の某高等学校舎監の言葉である。
写真1:旧武蔵高等学校校舎(1923年(T12年))(武蔵大学)
写真2:一番有名な旧第一高等学校本館(1933年(S8年))(東大駒場)
旧制高等学校の目的:
戦前日本に存在した高等教育機関のひとつで男子の国民道徳を充実させ、高等普通教育を完成することを目的としていた。エリートに対する一般教養教育を目的とし、大学への予備的な教育機関としての役割を担った。現在でいえば、大学の1,2年生に対する教育(教養課程)に相当する。
(ただし、戦後の混乱期に旧制高等学校に少数ではあるが女学生も入学したらしい)
旧制高校は最終的に39校あったそうである。修業年限は3年である(尋常科を置く場合は7年)。誰でも一応知っていて、寮歌も有名なのが”ナンバースクール”8校。これらの旧制高校は旧制大学や他の高等教育機関と統合して大学に昇格している。
1.官立
校名 (現在) 寮歌等
第一高等学校 (東京大学教養学部) ああ玉杯に花うけて、春爛漫の花の色
第二高等学校 (東北大学教養部) 第二高等学校校歌
第三高等学校 (京都大学教養部) 紅もゆる岡の花
第四高等学校 (金沢大学法文学部) 南寮寮歌 北の都
第五高等学校 (熊本大学法文学部) 武夫原、椿花咲く
第六高等学校 (岡山大学法文学部) 北寮寮歌若紫に
第七高等学校 (鹿児島大学文理学部) 北辰斜めに、楠の葉末
第八高等学校 (名古屋大学教養部) 伊吹おろし、春は日影
その他の旧制高校は所在地の名前がついており、”ネームスクール”といわれた。その多くは新制大学の教養部や文理学部の母体となった。
2.官立
東京地区では 、浦和高等学校 (埼玉大学文理学部)、学習院高等科(宮内省管轄) (学習院大学、戦後私立)、東京高等学校(7年)(東京大学教育学部附属高校、東京大学教養学部)。大阪地区では大阪高等学校 (大阪大学教養学部)である。
第一高等学校より入学するのが難しいのが学習院高等科であろう。勉強ができても、金持ちでも簡単には入れない。戦後、学習院大学になってからは普通の私立大学になり下がってしまったが。
あの三島由紀夫は1944年(S19)9月に学習院高等科を卒業、同年10月東京帝国大学法学部に入学し、1947年(S22)に東京大学を卒業している。彼は貴族でもないと思う。
第一高等学校に入れない場合、東京の近くのネームスクールは浦和(埼玉大)、水戸(茨城大)、静岡(静岡大)の高等学校である。関西地区では第三高等学校以外でネームスクールは大阪(大阪大)、姫路(神戸大)の高等学校がある。
3.公立
東京地区では、東京府立高等学校(7年) (東京都立大学附属高校、東京都立大学教養部)、大阪地区では 大阪府立浪速高等学校(7年) (尋常科廃止、大阪大学教養学部)である。
4.私立
東京地区では、早稲田高等学院 (早稲田大学)のみが3年制である。他の武蔵高等学校 (武蔵大学)、成城高等学校 (成城大学)、 成蹊高等学校 (成蹊大学)は7年制である。
その他に、帝国大学予科というのがあった。 北海道帝国大学予科、京城帝国大学予科(ソウル大学) 、 台北帝国大学予科 (台湾大学)。そこまで覚える必要もないだろう。
京城、台北の両帝国大学は大阪帝大、名古屋帝大より先に設置されているという歴史的事実から、現在でも日本の有名大学よりレベルは高いのではないか。